放射線治療医 海野しおんの雑記帳

とある放射線治療医の雑記帳です。

【腎細胞がん】原発性腎細胞がんに対する体幹部定位放射線治療とその他のアブレーション治療の比較【システマティックレビューとメタ解析】

Comparative efficacy and safety of ablative therapies in the management of primary localised renal cell carcinoma: a systematic review and meta-analysis.
Huang RS, Chow R, Benour A, et al. Lancet Oncol. 2025 Mar;26(3):387-398. doi: 10.1016/S1470-2045(24)00731-9. Epub 2025 Feb 5. PMID: 39922208.

【概要】
・小型(<4 cm)の腎細胞がんでは、体幹部定位放射線治療(SBRT)、ラジオ波焼灼療法(RFA)、マイクロ波焼灼療法(MWA)、凍結療法(Cryo)はいずれも高い局所制御と安全性を示す
・サイズが大きい(≧4 cm)では体幹部定位放射線治療の局所制御が良好で、凍結療法では重篤な有害事象の発生リスクがやや高い
・腎機能低下は比較的軽度で、治療群間差は認められず、疾患特異的生存は概ね高水準であったが患者/腫瘍背景による影響の存在の可能性あり

【対象と方法】
・対象:原発性限局性腎細胞がん(RCC)に対する低侵襲的治療(体幹部定位放射線治療 [SBRT]、ラジオ波焼灼療法 [RFA]、マイクロ波焼灼療法 [MWA]、凍結療法 [Cryo])の系統的レビューとメタ解析(2000-2024年、PROSPERO:CRD42024511840)
・133研究、8,910例を対象に解析(SBRT 612例、RFA 2,503例、MWA 2,069例、Cryo 3,726例)
・患者背景:
 ・全体の平均年齢:68歳、体幹部定位放射線治療群で最も高齢(74歳)で、腫瘍サイズが大きかった(SBRT 3.9 cm、RFA 2.8 cm、MWA 3.0 cm、Cryo 2.9 cm)
 ・治療前のeGFRには明らかな群間差なし
・評価項目:
 ・主要評価項目:局所制御(LC)
 ・副次評価項目:がん特異的生存(CSS)、eGFRの変化、有害事象

【結果】
局所制御率体幹部定位放射線治療 vs ラジオ波焼灼療法 vs マイクロ波焼灼療法 vs 凍結療法
 ・1年:99% vs 96% vs 97% vs 95%
 ・2年:97% vs 95% vs 95% vs 94%
 ・5年:95% vs 92% vs 86% vs 90%
腫瘍径(<4 cm):局所制御率はいずれの治療でも同程度
 ・5年局所制御率:SBRT 98%、RFA 95%、MWA 92%、Cryo 91%
腫瘍径(≧4 cm):体幹部定位放射線治療で優位
 ・5年局所制御率:SBRT 93%、RFA 79%、MWA 82%、Cryo 85%
・がん特異的生存率:
 ・1年は各群ともほぼ100%
 ・5年はSBRT 95%、RFA 100%、MWA 98%、Cryo 97%
  →SBRT群で高齢者が多く、サイズの大きな腫瘍が多く存在した影響が一因
腎機能:
 ・eGFRの低下は軽度で群間差なし
  ・1年の変化:SBRT -6.0、RFA -4.9、MWA -1.8、Cryo -5.2 mL/min/1.73m2
  ・2年、5年でも統計学的有意差なし
有害事象:
 ・Grade 3-4の有害事象は、Cryoで3%と他よりやや高率(SBRT 2%、RFA 2%、MWA 1%)
 ・Grade 1-2の有害事象発生率は明らかな差は認められず
・研究デザインと異質性:
 ・体幹部定位放射線治療は前向き研究の比率が高く(57%)、I2は概ね低め(0-42%)、他の治療法は異質性が高い傾向。明らかな出版バイアスは示されず。
・追跡期間:
 ・ラジオ波焼灼療法がやや長い(中央値:34.2ヶ月)。SBRT:27.8ヶ月、MWA:24.5ヶ月、Cryo:28.7ヶ月
・組織型の分布:
 ・淡明細胞がんの割合はMWAで高く(72%)、RFAで低め(46%)
 ・Cryoは乳頭状型や犬歯木祖型の比率がやや高い
・メカニズムの考察:
 ・4 cm以上の病変や中心性病変では、熱的手技で熱シンク/凍結範囲の限界が出やすく、不完全治療のリスクが存在する。体幹部定位放射線治療は、サイズが大きなものや・中心性の病変にも理論上有利
・安全性:
 ・凍結療法は重篤な有害事象の発生率が相対的に高く、血管・尿管・腸管近接時のプローブ計画に注意が必要
 ・体幹部定位放射線治療は侵襲性が低く、周辺臓器の線量管理(尿管・腸管)と適応照射(MRgRTなど)が鍵となってくる
・臨床適用:
 ・<4 cm、末梢型の病変ではいずれの治療でも高い局所制御が得られ、安全性も高い
 ・≧4 cmまたは中心性の病変であれば体幹部定位放射線治療を強く検討する必要がある
 ・高齢者、併存症、腎機能温存のニーズにより個別化が必要
・治療における意思決定:
 ・腫瘍径、位置、患者背景(年齢・腎機能・合併症)、施設の技術・経験、患者の希望(非侵襲性・通院回数・合併症の許容範囲)を統合し、多職種で最適化する必要がある
 ・手術や監視療法も比較に含める
・研究の限界:
 ・非ランダム化試験、後ろ向き研究が中心で、局所制御の定義や画像評価の不均一、再アブレーションの除外、費用対効果や生活の質は評価を行っていないなど
・今後の課題:
 ・大規模ランダム化比較試験、長期全生存成績や生活の質、費用対効果、腫瘍径や位置による最適な治療戦略の確立、再治療の位置づけ、線量効果反応や適応照射の標準化などが今後の課題

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