【PACE-A】限局性前立腺がんに対する体幹部定位放射線治療(SBRT) vs 前立腺全摘除術(RP):患者報告アウトカムの比較【第III相試験】
Radical Prostatectomy Versus Stereotactic Radiotherapy for Clinically Localised Prostate Cancer: Results of the PACE-A Randomised Trial.
van As N, Yasar B, Griffin C, et al. Eur Urol. 2024 Dec;86(6):566-576. doi: 10.1016/j.eururo.2024.08.030. Epub 2024 Sep 11. PMID: 39266383.
【概要】
・限局性前立腺がんにおいて、体幹部定位放射線治療(SBRT)は2年時点で尿失禁と性機能において前立腺全摘除術(RP)より優れていた
・一方で腸管関連の自覚症状は定位照射群で不利であったが、重篤例はまれ
・臨床医評価では毒性は両群とも低かったが、患者報告アウトカムとの乖離も認められた
【背景と目的】
・低リスク~中間リスクの限局性前立腺がんにおいて、体幹部定位放射線治療(SBRT)と根治的前立腺全摘術(RP)の患者報告アウトカムを比較すること。
・主要評価項目は、「2年時点の尿パッド使用(EPIC-26 Q27)」と「2年時点のEPIC腸管ドメインスコア」
【対象と方法】
・PACE-A試験:第III相ランダム化試験
・主要な実施施設は英国8施設
・追跡期間中央値:60.7ヶ月
・2年時点の患者報告アウトカム回収率は前立腺全摘群(RP) 68%、体幹部定位放射線治療群(SBRT) 82%
・対象:
・2012年~2022年に123例を登録(前立腺全摘群:60例、定位照射群:63例)
・年齢中央値:65.5歳、PSA中央値:7.9 ng/mL
・94~95%がNCCN中間リスク、Gleason 3+4が80%程度
・実際に治療が行われたのは前立腺全摘群(RP)50例、定位照射群(SBRT):60例
・治療介入:
・体幹部定位放射線治療(SBRT):
・計画標的体積(PTV)の95%に対して36.25 Gy/5回を照射、臨床的標的体積(CTV)へは40 Gy/5回。
・計画標的体積(CTV)= 低リスク:前立腺のみ、中間リスク:前立腺+精嚢近位 1 cm
・CTVに4~5 mmのマージンを付加してPTVを設定(後方のマージン:3~5 mm)
・治療装置:主にCyberKnife(75%)
・前立腺全摘除術(RP):
・全例腹腔鏡下手術を実施、84%はロボット支援
【結果】
・患者報告アウトカム(尿失禁):
・2年時点での「1枚以上の尿パッド」使用率:
・前立腺全摘群(RP):50%(16/32例)、定位照射群(SBRT):6.5%(3/46例)
・差:43%(95% CI: 25-62, p<0.001)
・EPIC尿失禁ドメインも定位照射(SBRT)で良好(中央値:100 vs 77.3%, p=0.003)
・患者報告アウトカム(腸管):
・2年時点のEPIC腸管ドメインは前立腺全摘(RP)群が良好(中央値:100 vs 87.5)
・平均差:8.9(95% CI: 4.2-13.7, p<0.001)
・臨床的に意味のある悪化(MCID超え)も定位照射群(SBRT)で多かった
・患者報告アウトカム(性機能):
・EPIC性機能ドメインは定位照射群で良好(中央値:62.5 vs 18, p<0.001)
・IIEF-5でも前立腺全摘群(RP)の勃起機能低下が顕著
・臨床医評価でも24ヶ月時点の勃起機能障害(Grade 2以上)は前立腺全摘群(RP)63% vs 定位照射群(SBRT)18%(p<0.001)
・排尿症状:
・24ヶ月時点でのIPSSでは中等度/重度の症状が前立腺全摘群(RP)16% vs 定位照射群(SBRT)38%(主に排尿症状の差)
・一方で、IPSSの生活の質(QoL)の項目に両群間に有意差なし
・臨床医報告による毒性:
・尿路障害/消化管障害(Grade 2以上)は両群とも低水準で長期的に大差を認めなかった。
・RTOG評価でも定位照射群(SBRT)の中等度以上の毒性発生はまれ
・患者報告アウトカムと医師評価による報告には乖離があり、患者報告アウトカムの重要性が再確認された
【解釈】
・限局性前立腺がんにおいて、体幹部定位放射線治療(SBRT)は「尿失禁」と「性機能」において明確な利点がある一方で、「腸管症状」は軽度ながら不良な傾向
・重大な腸管および尿路イベントの発生はまれ
【臨床的含意】
・中間リスク中心の限局性前立腺がんで、尿失禁や性機能を重視する患者には体幹部定位放射線治療が有力な治療選択肢
・一方で腸管症状を最小化したい場合には前立腺全摘除術が選択肢となり、患者の価値観に応じた共有意思決定が重要
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