【膵がん】切除不能膵がんに対する導入化学療法+化学放射線療法 vs 化学療法単独【CONKO-007:第III相ランダム化試験】
Benefit of Chemoradiotherapy Versus Chemotherapy After Induction Therapy for Conversion of Unresectable Into Resectable Pancreatic Cancer: The Randomized CONKO-007 Trial.
Fietkau R, Ghadimi M, Grützmann R, et al. J Clin Oncol. 2025 Aug 13:JCO2401502. doi: 10.1200/JCO-24-01502. Epub ahead of print. PMID: 40802908.
【概要】
・CONKO-007試験は、切除不能膵がんに対して導入化学療法後に化学放射線療法を追加する意義を検討した多施設共同第III相試験。
・全体のR0切除率や全生存は化学療法単独と比較して有意差を認めなかったものの、実際に手術が実施された患者では、化学放射線療法群でR0切除率、病理学的奏効率、局所制御が有意に改善
・特にR0切除例では5年生存率がおよそ28-30%に達し、長期生存の可能性が示唆された。
【背景と目的】
・膵がんは依然として予後不良の悪性腫瘍であり、5年生存率は極めて低い。
・遠隔転移を伴わない症例は切除可能群、切除可能境界群(borderline resectable)、局所進行切除不能群(LAPC)に分類される。
・局所進行切除不能群(LAPC)に対しては化学療法が標準治療とされるが、外科的切除に至る症例は限られ、長期生存は稀である。
・局所療法(放射線治療や科学放射線療法)の有用性は一貫したエビデンスがなく、無益あるいは有害とする報告も存在する。
・このため、局所進行膵がんにおける化学放射線療法(CRT)の役割は確立されていない。
・CONKO-007試験は、化学療法後に化学放射線療法を追加することで、切除不能膵がんを切除可能へと転換しうるか、またその際のR0切除率(病理学的に断端陰性の完全切除率)や予後にどのような影響を及ぼすかを検証することを目的として設計された。
【対象と方法】
・多施設共同第III相試験(CONKO-007)
・実施施設:ドイツ国内54施設
・対象:
・18歳以上
・遠隔転移を認めない切除不能膵がん
・全身状態:ECOG PS ≦2
・治療デザイン:
・導入療法:
・全患者に対して3ヶ月間の化学療法を実施。レジメンは主にFOLFIRINOX(402例)またはゲムシタビン(93例)
・無作為割り付け:
・導入量後に病勢増悪を認めなかった336例を無作為に1:1で2群に割り付け
・継続化学療法群(167例)
・化学放射線療法群(169例;50.4 Gy + ゲムシタビン同時併用)
・その後、中央外科パネルにより再度切除可能性を判定し、可能と判断された場合は手術を推奨。
・評価項目:
・主要評価項目:当初は全生存期間(OS)を主要評価項目としていたが、登録の遅れのため途中で「R0切除率」に変更
・副次評価項目:全生存、無病生存、病理学的所見、局所制御率、遠隔転移発生率、毒性など
・経過観察:
・追跡期間(中央値):76ヶ月
【結果】
・2013年~2021年に525例が登録され、495例に対して導入療法を実施。
・159例は病勢進行のために除外され、336例が無作為化。
・両群の背景因子は、年齢・性別・全身状態・腫瘍の部位・治療レジメンでバランスが取れていた
・手術・切除率:
・手術施行率:化学療法群 35.9%(60/167例) vs 化学放射線療法群 36.6%(62/169例)で有意差なし
・R0切除率(主要評価項目):
・ITT集団におけるR0切除率:化学療法群 18% vs 化学放射線療法群 25%(p=0.113)
・実際に手術を受けた患者に限ると
・R0切除率:化学療法群 50% vs 化学放射線療法群 69%(p=0.04)と化学放射線療法群で良好
・病理学的完全奏効率(pCR):化学療法群 2% vs 化学放射線療法群 18%(p=0.004)
・リンパ節転移陰性率:化学療法群 51% vs 化学放射線療法群 75%(p=0.03)
・生存解析:
・ITT集団での全生存期間(中央値):化学療法群 14ヶ月 vs 化学放射線療法群 15ヶ月(HR 0.94, p=0.57)
・無増悪生存期間(中央値):化学療法群 8ヶ月 vs 化学放射線療法群 9ヶ月
・5年生存率:化学療法群 3.8% vs 化学放射線療法群 10.1%
・手術施行例では、生存成績が大幅に改善:
・生存期間(中央値):手術施行群 19ヶ月 vs 非施行群 13ヶ月
・5年生存率:手術施行群 18.7% vs 0%
・特にR0切除例では生存期間(中央値):24~33ヶ月、5年生存率:28~30%
・サブグループ解析では、化学放射線療法+手術の5年生存率は24.8%と、化学療法+手術の11.9%のおよそ2倍であったが有意差には至らず(HR 0.88, p=0.70)
・局所制御と再発:
・化学放射線療法群で局所再発が有意に少なかった。
・5年累積局所再発率:化学放射線療法群 46.9% vs 化学療法群 63.2%(HR 0.33, p<0.001)
・遠隔転移発生率は両群間に有意差を認めず(83~85%)
・毒性と合併症
・全体として忍容性は良好で、Grade 3-4白血球減少と血小板減少は化学放射線療法群に多く認められた
・治療関連死亡:化学療法群 3例(2%) vs 化学放射線療法群 0例
・手術関連死亡:両群ともおよそ8%
・手術時間や術後合併症に有意差なく、化学放射線療法群では入院期間がやや延長(中央値:19日 vs 15日, p=0.04)
【考察】
・CONKO-007試験は、導入化学療法後に化学放射線療法を追加しても全体の全生存は改善しなかったが、外科的切除に至った症例においては明確な利益が示された。
・化学放射線療法はR0切除率、病理学的完全奏効率、リンパ節転移陰性率を改善し、局所制御を改善することが確認された。
・重要な知見として、本来切除不能と判定された局所進行切除不能膵がん患者のおよそ3分の1が導入療法後に切除可能となり、20%前後が最終的にR0切除に到達した点が挙げられる。
・R0切除は最も強い予後規定因子であり、本研究でもR0切除例の5年生存率は28%に達した。
・一方で、本試験にはいくつかの限界が存在する。
・主要評価項目を全生存からR0切除率へ変更した
・放射線治療の中央レビューが行われていなかった
・切除可能境界群が一部含まれていた可能性がある
・分子バイオマーカー解析が実施されてない
・しかしながら、結果は導入化学療法後の化学放射線療法は、局所進行切除不能膵がん患者において、切除を視野にいれる場合に価値のある治療戦略との結論を支持する。
【結論】
・導入化学療法後の化学放射線療法は、全体のR0切除率や全生存を有意に改善しなかった。
・実際に切除を受けた患者では化学放射線療法群のR0切除率が高く、局所制御も改善した。
・外科的切除が可能となった症例では長期生存が期待でき、R0切除例の5年生存率は28-30%に達した。
・局所進行切除不能膵がんにおける化学放射線療法は、全例に推奨されるわけではないが、切除を目指す患者において有望な治療選択肢になろう。
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