放射線治療医 海野しおんの雑記帳

とある放射線治療医の雑記帳です。

【第II相ランダム化試験】有痛性脊椎転移に対する緩和照射+ラジオ波焼灼療法(RFA)/経皮的椎体形成術(PVA) vs 緩和照射単独

Radiation therapy (RT) alone versus RT plus radiofrequency ablation/vertebral augmentation for painful spine metastasis: a phase 2 randomized controlled trial.
Kotecha R, Gal O, Appel H, et al. Neuro Oncol. 2025 Oct 7:noaf231. doi: 10.1093/neuonc/noaf231. Epub ahead of print. PMID: 41056433.

【概要】
・単施設の第II相ランダム化試験(63例)で有痛性脊椎転移に対する放射線治療単独と放射線治療+ラジオ波焼灼療法(RFA)/椎体形成術(PVA)を比較
・3ヶ月後の疼痛奏効率、完全寛解率、NPRS低下は両群で同等
・毒性、QOLにも有意差なし
・有痛性脊椎転移に対する初期治療は放射線治療単独が妥当で、RFAやPVAは機械的不安定性が認められる場合などの選択的適応で検討

【背景と目的】
有痛性の脊椎転移に対する放射線治療は除痛に有効とされるが、放射線治療にラジオ波焼灼療法(RFA)や経皮的椎体形成術(PVA)を併用する意義は明確ではない。
・本試験は放射線治療単独と放射線治療+RFA/PVAの除痛効果と生活の質(QoL)を前向きに比較

【対象と方法】
・単施設、ランダム化第II相試験
・対象:
 ・第5胸椎~第5腰椎の脊椎転移、ラジオ波焼灼療法の適応:1~2病変、ベースラインのNPRS 5以上
 ・腫瘍の放射線感受性(抵抗性 vs 感受性)で層別化し、1:2の割合で割り付け(放射線治療単独 vs 放射線治療+RFA/PVA)
・評価項目:
 ・主要評価項目:3ヶ月時点での疼痛奏効率
 ・副次評価項目:除痛の早さ/持続期間、有害事象、生活の施設(FACT-G、BPI、EQ-5D)

【結果】
・予定症例数の79%が登録された時点で試験は早期終了
 ・63例が解析対象(放射線治療単独:21例、放射線治療+RFA/PVA:42例)
・ベースラインの疼痛(中央値):
 ・放射線治療単独:10(IQR 8-10)、放射線治療+RFA/PVA:9(7.5-10)
・主要結果:
 ・3ヶ月時点での疼痛奏効率:
  ・放射線治療単独:50% vs 放射線治療+RFA/PVA:48%(p=0.92)
 ・疼痛の完全寛解率(CR):
  ・放射線治療単独:17% vs 放射線治療+RFA/PVA:21%(p=0.77)
 ・NPRAの変化:両群とも中央値-4で同等
・副次評価項目:
 ・鎮痛効果の発現速度と持続期間は共に群間差なし
 ・毒性発現率は両群で同程度で新たな安全性シグナルは示されず
 ・QOL指標(FACT-G/BPI/EQ-5D)も両群で有意差なし

【解釈】
・有痛性の脊椎転移に対する放射線治療へラジオ波焼灼療法(RFA)や椎体形成術(PVA)を追加することによる3ヶ月後の疼痛制御やQOLの改善効果は認められなかった
放射線治療単独で十分な鎮痛が得られる状況では侵襲的手技のルーチンでの併用の利益は限定的
・RFAやPVAは機械的な不安定性が認められる場合や圧壊痛の影響が大きい場合など、選択的適応での位置づけの検討が必要

【結論】
有痛性の脊椎転移に対する放射線治療+RFA/PVAは、放射線治療単独と比較して、3ヶ月時点での除痛効果やQOLを改善しない
放射線治療単独治療が標準で、RFA/PVAは厳密な適応下の補完的手段

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