放射線治療医 海野しおんの雑記帳

とある放射線治療医の雑記帳です。

【非小細胞肺がん】局所進行非小細胞肺がんに対する同時化学放射線療法:PETによる代謝体積に応じた線量調整【REPAINT:ランダム化第II相試験】

Randomized Evaluation of the PET-Adjusted IMRT for NSCLC Trial (REPAINT).
Ohri N, Bodner WR, Kabarriti R, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2025 Jun 1;122(2):365-373. doi: 10.1016/j.ijrobp.2025.01.005. Epub 2025 Jan 23. PMID: 39862898.

【概要】
・REPAINT試験は、PET代謝体積(MV)に基づく線量調整(dose-painted RT)と標準的な60 Gy照射を比較したランダム化第II相試験
・両群間に無増悪生存/全生存に有意差はなく、疾患制御は維持された
・dose-painted群では食道への照射線量が低減し、Grade 3-4リンパ球減少も有意に減少した
・リスク適応型の線量調整(deintensification)は免疫抑制を軽減できる可能性があり、大規模試験での検証が必要と結論付けられた

【背景と目的】
・局所進行非小細胞肺がん(LA-NSCLC)の標準治療は、化学療法併用で胸部腫瘍およびリンパ節転移に対して60Gy/30回を照射する方法が用いられてきた。
・しかし、過去のランダム化試験では線量増加による成績改善は認められず、むしろ毒性が増加するという報告がなされている。
・さらに免疫抑制を含む有害事象の増加が課題であった。
・一方、再発形式の解析から、局所再発は主に代謝体積(metabolic volume)の大きい腫瘍に集中することが明らかとなり、小さな病変では低線量の照射でも制御可能である可能性が示唆されてきた。
・著者らの先行単群試験では、PETを用いた腫瘍の代謝体積に応じた線量調整(deintesification)が良好な結果を示したため、本研究(REPAINT試験)では無作為化試験として検証を行った。

【対象と方法】
・第II相ランダム化試験(REPAINT試験、NCT03481114)
・対象:
 ・病理学的に診断されたIII期非小細胞肺がん(一部のII期/孤立性転移を有するIV期を許容)
 ・全身状態:ECOG PS 0-2
・全例に対してFDG-PET/CTと頭部画像検査を実施
・患者は腫瘍サイズと全身状態で層別化され、標準線量群とdose-paint群に1:1で割り付けられた。
 ・標準線量群:原発巣、リンパ節転移に対して60Gy/30回
 ・dose-paint群:代謝体積(20 cm3)超の病変に対しては55Gy/20回、それ以外には44-48Gy/20回を標的内同時ブースト法(SIB)を用いて照射
・両群ともカルボプラチン+パクリタキセルを同時併用、化学放射線療法後の補助療法として、EGFR変異例を除き、Durvalumabの投与を許容した。
・評価項目:
 ・主要評価項目:放射線治療開始6週後のGrade 3の患者報告型有害事象(PRO-CTCAE)
 ・服地評価項目:臨床医評価の有害事象、局所制御、無増悪生存、全生存
・統計解析は探索的に行い、無増悪生存/全生存はKaplan-Meier法で比較

【結果】
・2017年10月~2023年5月に50例が登録
 ・標準線量群:27例、dose-paint群:23例
・年齢中央値:70歳、III期:96%、PS2:26%、EGFR変異陽性:10%
・代謝体積(MV)中央値:41cc-48cc(両群間に有意差なし)
・治療完遂率:
 ・94%が放射線治療を完遂し、完遂できなかった理由は、脳梗塞、COVID-19に伴う塩部、心筋梗塞など
・補助療法:
 ・全体の80%に対してdurvalumabが投与され、EGFR変異例ではosimertinibが投与された
・患者報告型有害事象(PRO-CTCAE):
 ・41例が6週時点でのデータを提出。
 ・Grade 3の主な症状は、嚥下障害(32%)、倦怠感(27%)、咳(22%)
 ・治療終了後90日以内では、嚥下障害(40%)、倦怠感(40%)、咳(32%)
 ・両群間で有意差なし
・臨床医評価の有害事象(CTCAE):
 ・皮膚炎(Grade 2-3):16%
 ・食道炎:Grade 2:60%、Grade 3:6%
 ・放射線肺臓炎:Grade 2:24%、Grade 3:4%
  ・両群間差は認めなかった。
 ・血液毒性にて、Grade 3-4リンパ球減少発生率は、標準線量群と比較して、dose-paint群で有意に減少(81% vs 48%, p=0.012)
・臓器線量:
 ・標準線量群と比較して、dose-paint群で食道平均線量が有意に低下(-4.0 Gy, p=0.044)
 ・心臓や肺の線量の低下傾向を示したが有意差なし
・臨床成績:
 ・追跡期間(中央値):50ヶ月
 ・無増悪生存期間(中央値):18ヶ月(p=0.562)
 ・全生存期間(中央値):42ヶ月(p=0.765)
 ・局所再発:標準線量群 1例 vs dose-paint群 2例
  ・多変量解析では、無増悪生存/全生存とも治療群は有意因子ではなく、代謝的腫瘍体積(MTV)が唯一雨の予測因子であった。
  ・全生存に関しては、扁平上皮がんが腺がんと比較して予後不良因子であった。

【考察】
・本試験では、局所進行非小細胞肺がんに対するリスク適応型放射線治療(deintensification)を検証した初のランダム化試験
 ・dose-paint放射線治療は、標準線量と同等の無増悪生存/全生存を示した
 ・正常組織への線量低減が得られ、特に食道線量の低下が確認された
 ・臨床的にはGrade 3以上の有害事象は、患者報告ベースで明らかとなったが、両群間に有意差はなかった
・免疫抑制関連毒性である高度のリンパ球減少はdose-paint群で有意に減少し、これは短期治療期間や胸部照射体積の減少によると考えられ、免疫療法併用時代において重要な臨床的意味を持つ可能性がある

【結論】
・局所進行非小細胞肺がんに対する化学放射線療法において、PET代謝体積に基づく線量調整(deintensification)は、疾患制御を損なうことなく、正常組織への照射線量の低減と重度のリンパ球減少のリスクを軽減できる可能性が示された。
・患者ベースでは高頻度に有害事象が生じることが明らかとなり、今後は患者報告型アウトカム(PRO)を治療計画に反映させる必要がある

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