放射線治療医 海野しおんの雑記帳

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【CLOVER:第I相試験】限局型小細胞肺がんに対する化学放射線療法へのデュルバルマブ(±トレメリムマブ)の同時併用

Durvalumab With or Without Tremelimumab in Combination With Chemoradiotherapy in Patients With Limited-Stage SCLC: Results from the Phase 1 CLOVER Study.
Cho BC, Ahn MJ, Nishio M, et al. JTO Clin Res Rep. 2025 Aug 5;6(10):100884. doi: 10.1016/j.jtocrr.2025.100884. PMID: 41069379; PMCID: PMC12506500.

【概要】
・CLOVER第1相試験(限局型小細胞肺がんコホート)では、同時化学放射線療法+デュルバルマブ(±トレメリムマブ)の同時併用+維持療法の忍容性と有望な活性が示唆された。
・デュルバルマブ+トレメリムマブ併用群では(放射線肺臓炎を含む)肺障害が増加し、重篤例の発生もあり、中止率も高かった。
・PD-L1は有意な予測因子ではなかった一方で、腫瘍炎症シグネチャ(TIS)/CD8A高値では無増悪生存が良好な傾向を認め、炎症型腫瘍(SCLC-I)で便益がある可能性が示唆
・標準治療は同時化学放射線療法→デュルバルマブによる維持療法(ADRIATIC試験)で、免疫療法の同時併用戦略は今後の無作為化試験での検証が必要

【背景と目的】
・限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)は小細胞肺がんのおよそ1/3を占める。
・標準治療はプラチナ製剤+エトポシド併用の同時化学放射線療法だが、再発をきたすことが多く、無増悪生存期間中央値13–17か月、全生存期間中央値28–39か月、5年生存率29–34%にとどまる。
放射線治療や化学療法は免疫原性細胞死・PD-L1誘導を介し、PD-(L)1阻害薬との相乗効果が得られる可能性がある。
CLOVER試験の限局型小細胞肺がんコホートでは、同時化学放射線療法にデュルバルマブ単独またはデュルバルマブ+トレメリムマブの同時併用+維持療法の安全性・忍容性と予備的有効性、候補バイオマーカー(PD-L1、CD8A、TIS)を評価した

【対象と方法】
・試験デザイン:4群構成
 ・通常分割照射+デュルバルマブ
 ・加速過分割照射+デュルバルマブ
 ・通常分割照射+デュルバルマブ+トレメリムマブ
 ・加速過分割+デュルバルマブ+トレメリムマブ
  ・各群で用量制限毒性確認後に拡大量を計画。スポンサー判断で早期終了
対象:
 ・AJCC第8版I–III期の治療歴のない限局型小細胞肺がん
 ・ECOG 0–1、RECIST測定病変あり、肺機能FEV1>1 Lまたは予測40%以上、DLCO>40%。
  ・計画時肺V20≧35%またはMLD>20 Gy、心V50≧25%は除外。
・免疫療法用量:
 ・デュルバルマブ1500 mg q4w、トレメリムマブ75 mg q4w×4回、その後デュルバルマブによる維持療法を病勢進行まで継続
・化学療法:
 ・シスプラチン60–80 mg/m² q3w day1+エトポシド100–120 mg/m² q3w day1–3(4–6コース)。
 ・不耐ではCBDCA AUC5へ切替可。
放射線治療
 ・通常分割照射:60-70 Gy/30-35回(6~7週)
 ・加速過分割:45 Gy/30回(1日2回)(3週)
 ・完全奏効/部分奏効例では予防的全脳照射(PCI)を許容

【結果】
・患者登録:
 ・2018/5/11–2020/3/27に33例が登録
  ・通常分割照射+デュルバルマブ:12例
  ・加速過分割照射+デュルバルマブ:12例
  ・通常分割照射+デュルバルマブ+トレメリムマブ:6例
  ・加速過分割照射+デュルバルマブ+トレメリムマブ:3例
・年齢中央値60歳、男性73%、アジア系82%、III期79%。
・治療の実施:
 ・化学療法は大半が規定回数(4~6コース)を完遂。
 ・放射線治療は通常分割照射+デュルバルマブ群の1例を除き、完遂した。
 ・予防的全脳照射(PCI):
  ・デュルバルマブ:63%、デュルバルマブ+トレメリムマブ:44%
安全性(主要評価):
 ・用量制限毒性の発生なし
 ・Grade3/4有害事象:
  ・デュルバルマブ単独群79%、併用群89%
  ・主に血液毒性(好中球減少など)
 ・重篤有害事象:
  ・デュルバルマブ単独群21%、併用群44%
 ・治療関連死亡:発生なし
 ・肺障害(事後解析):
  ・間質性肺炎/放射線肺臓炎
   ・任意グレード:デュルバルマブ単独群46%、デュルバルマブ+トレメリムマブ群78%
   ・症候性(Grade 2以上)はデュルバルマブ単独群:17%(全てGrade 2)、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用群:56%(Grade 3が22%)
  ・免疫療法の中止はデュルバルマブ単独:4%、デュルバルマブ+トレメリムマブ:22%
  ・間質性肺炎/放射線肺臓炎発症までの期間中央値:141日 vs 143日
 ・免疫関連有害事象:
  ・デュルバルマブ単独群17%、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用群33%
・無増悪生存(PFS):
 ・通常分割照射+デュルバルマブ:9.2ヶ月、加速過分割照射+デュルバルマブ:16.6ヶ月、通常分割照射+デュルバルマブ+トレメリムマブ:未到達、加速過分割照射+デュルバルマブ+トレメリムマブ:9.3ヶ月
・全生存(OS):
 ・12ヶ月全生存率:
  ・デュルバルマブ併用群:92%、デュルバルマブ+トレメリムマブ群:100%
・バイオマーカー:
 ・PD-L1発現と無増悪生存の有意な関連性は示されず
 ・腫瘍炎症シグネチャ(TIS)高発現およびCD8A高発現群で無増悪生存が数値上良好であった。
・位置づけ:
 ・限局型小細胞肺がんに対する同時化学放射線療法後のデュルバルマブによる維持療法で全生存および無増悪生存の改善効果が示された。
・同時化学放射線療法への免疫療法の同時併用はLU005試験で全生存は改善されず。STIMULI試験は早期終了となり、KEYLYNK-013試験が現在進行中。

【解釈】
・今回の第1相試験では、同時化学放射線療法にデュルバルマブ(±トレメリムマブ)の同時併用は実施可能で腫瘍学的活性を示すこと、併用により肺臓炎が増加すること、加速過分割照射アームで無増悪生存が良好な傾向にあることが示唆された。

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