Durvalumab and tremelimumab plus local partial tumour ablation (radiofrequency ablation or stereotactic radiotherapy) in patients with unresectable liver metastases from metastatic colorectal cancer: results of the EORTC-1560-GITCG multicentre, single-arm phase II study (ILOC)
Seligmann J, Koessler T, Mauer M, et al. ESMO Open. 2025 Jul 23;10(8):105508. DOI: 10.1016/j.esmoop.2025.105508. Epub ahead of print. PMID: 40706222.
・本研究は切除不能な肝転移を有する大腸がん(mCRC)において、デュルバルマブ(PD-L1阻害薬)とトレメリムマブ(CTLA-4阻害薬)の2種類の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を局所治療(ラジオ波焼灼療法 [RFA] または 体幹部定位放射線治療 [SBRT])と併用し、局所未治療病変におけるアブスコパル効果(免疫誘導による遠隔効果)を誘導できるかを評価した、EORTC主導の多施設共同第II相試験(ILOC)
【背景】
・遠隔転移を有する大腸がん(mCRC)のうち、マイクロサテライト安定型(MSS)腫瘍では、免疫療法の効果は極めて限定的であり、新たな治療戦略の模索が求められている。
・肝転移は大腸がんの主要な転移部位であり、免疫抑制的な腫瘍環境のため、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果が乏しいことが知られている。
・一方、局所アブレーション治療(LAT)は、腫瘍抗原の放出や樹状細胞の活性化を通じて、全身免疫応答を引き起こす可能性があり、アブスコパル効果を期待できるとされる。
・本研究では、初回または二次化学療法によって病勢安定(SD)または部分奏効(PR)を得た、切除不能な肝転移を有するマイクロサテライト安定型(MSS)大腸がん患者を対象に、ラジオ波焼灼療法(RFA)または定位放射線治療(SBRT)による部分的な局所治療を免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と併用し、非治療病変における奏効率を主要評価項目として検証した。
【対象と方法】
・多施設共同第II相試験(ILOC)
・対象:
・化学療法により病勢安定(SD)または部分奏効(PR)となった、肝転移主体の大腸がん(mCRC)
・マイクロサテライト安定型(MSS)が望ましいが必須ではない
・介入:
・デュルバルマブ 150 mg および トレメリムマブ 75 mgを4週毎に最大4サイクル併用後、デュルバルマブ単剤を8ヶ月まで継続
・初回免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与の8~14日後にラジオ波焼灼療法(RFA)または体幹部定位放射線治療(SBRT)を1回施行
・体幹部定位放射線治療(SBRT):30 Gy/3回
・評価項目:
・主要評価項目:iRECIST基準に基づく、局所未治療病変の客観的奏効率(ORR)
・副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)、全生存(OS)、安全性
【結果】
・23例が登録(解析対象:治療を受けた20例)
・局所治療:ラジオ波焼灼療法(RFA)12例、定位放射線治療(SBRT)8例
・局所未治療病変における客観的奏効率(ORR):0%
・病勢安定(SD):9例(45%)、病勢進行(PD):11例(55%)
・Simonの二段階設計に基づき、有効性基準未達と判断され、第1段階で試験は早期中止
・無増悪生存期間(中央値):2.2ヶ月
・ラジオ波焼灼療法(RFA)群:2.2ヶ月、定位放射線治療群(SBRT):2.8ヶ月
・全生存期間(中央値):16.1ヶ月
・有害事象:
・重大な有害事象(SAE):3例(肝炎、尿路感染、免疫性肺障害)
・治療関連死の発生なし
・主な治療中止理由:病勢進行(85%)
【考察】
・本試験は、免疫療法と局所アブレーション治療(LAT)の併用により、非治療病変におけるアブスコパル効果は確認されず、有効性の面で期待外れであった
・マイクロサテライト安定型(MSS)大腸がんでは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に対して不応性であり、本研究でもその傾向が裏付けられた
・一方で、最近ではbotensilimab+balstilimabのような新規免疫療法併用により、マイクロサテライト安定型でも奏効例が見られることが報告されているが、肝転移を有する症例では効果が乏しいという報告もあり、肝は「免疫の砂漠」であると指摘されている
・ラジオ波焼灼療法(RFA)や定位放射線治療(SBRT)による局所治療が全身的な免疫応答を促すという仮説自体も、他の腫瘍を含めた複数の臨床試験で十分な臨床効果が確認されておらず、本研究もそれを支持する内容となった
・注目すべきは、局所アブレーション治療(LAT)が、一部では腫瘍促進的な微小環境を形成する可能性が報告されており、慎重な検討が必要であるという知見
【結論】
・今回の第II相試験では、デュルバルマブ+トレメリムマブに部分的な局所アブレーション治療(LAT)を加えても、非治療病変における臨床的奏効は得られず、期待されたアブスコパル効果の裏付けは得られなかった。
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