オリゴ転移を有する前立腺がん:体幹部定位放射線治療(SABR)vs 経過観察【ORIOLE】
Outcomes of Observation vs Stereotactic Ablative Radiation for Oligometastatic Prostate Cancer: The ORIOLE Phase 2 Randomized Clinical Trial.
Phillips R, Shi WY, Deek M, et al. JAMA Oncol. 2020 May 1;6(5):650-659.DOI: 10.1001/jamaoncol.2020.0147. PMID: 32215577; PMCID: PMC7225913.

【背景と目的】
・前立腺がんは米国で最も多い男性のがんであり、年間3万人が死亡している。
・進行した転移を有する前立腺がんは現在でも根治困難であるが、近年オリゴ転移(OM)の病態が注目されている。
・オリゴ転移(OM)はHellmanとWeichselbaumにより提唱された概念で、全身治療に加えて局所治療が有効となる可能性がある中間段階と考えられている。
・特に体幹部定位放射線治療(SABR)は非小細胞肺がんなど他のがんにおいて、オリゴ転移病変の局所制御と生存期間延長に寄与することが示されてきた。
・前立腺がん領域においてもSTOMP試験などが体幹部定位放射線治療(SABR)の有効性を示唆されており、アンドロゲン除去療法(ADT)開始を遅らせる効果が期待されている。
・しかし、体幹部定位放射線治療(SABR)の免疫学的効果や分子マーカーの役割は十分に検討されていない。
・ORIOLE試験は、ホルモン感受性前立腺がんで、転移病巣が1~3個のオリゴ転移患者において、体幹部定位放射線治療(SABR)が経過観察と比較して病勢進行を抑制するかを評価することを目的とした。
・また、PSMA-PETによる分子画像診断や循環腫瘍DNA(ctDNA)、T細胞レパトリア解析などの生物学的相関解析も実施した。
【対象と方法】
・ランダム化第II相試験(2:1の割合で体幹部定位放射線治療群と経過観察群にランダム化)
・試験弛緩:2016年5月~2018年3月
・対象:80例をスクリーニングし、54例を登録
・適格基準:
・ホルモン感受性前立腺がん
・従来の画像診断(CT/MRI/骨シンチ)でオリゴ転移(1~3病変)
・登録の6ヶ月以内にアンドロゲン除去療法(ADT)未施行
・治療介入:
・体幹部定位放射線治療群(SABR):1~3病変に対して定位照射を施行(19.5~48Gy/3~5分割)
・経過観察群:定期的なPSA値と画像診断のみ
・主要評価項目:6ヶ月時点での病勢進行(PSA値上昇、画像的な進行、症状進行、アンドロゲン除去療法開始または死亡)
【結果】
・年齢中央値:定位照射群 68歳、経過観察群 68歳
・Gleasonスコアは経過観察群でやや高め
・PSA値中央値:定位照射群 6 ng/mL、経過観察群 7 ng/mL
・6ヶ月時点での病勢進行率:
・定位放射線治療(SABR)群19%、経過観察群 61%(p=0.005)
・無増悪生存期間(PFS):
・無増悪生存期間(中央値):定位放射線治療(SABR)群 未到達、経過観察群:5.8ヶ月
・HR 0.30 (95% CI: 0.11-0.81, p=0.002)
・PSA無増悪生存期間:
・体幹部定位放射線治療(SABR)群:未到達、経過観察群:6.4ヶ月
・HR 0.31 (p=0.002)
・局所制御率:定位放射線治療(SABR)群の6ヶ月局所制御率 99%
・PSMA-PETで未治療病変ありの場合の無増悪生存(PFS)
・全病変に対する治療あり:未到達
・未治療病変あり:無増悪生存期間(中央値)11.8ヶ月(p=0.006)
・新規転移発生率:
・全病変に対する治療あり:16%
・未治療病変あり:63%(p=0.006)
・有害事象:Grade 3以上の有害事象の発生なし
・生活の質(QoL):両群間に有意差なし
・生物学的解析:
・T細胞レパトリア:
・体幹部定位放射線治療(SABR)群でT細胞クローンの拡大が顕著
・基礎的なT細胞クローナリティが高い患者は、定位放射線治療(SABR)で進行率が低かった(p=0.03)
・循環腫瘍DNA(ctDNA)解析:
・37%の患者で非同義変異が検出された(主にTP53、ATM、BRCA1/2)
・高リスク変異を有する患者では定位放射線治療(SABR)による無増悪生存の改善効果が限定的であった
・高リスク変異のない患者では、定位放射線治療(SABR)群の無増悪生存が良好
【考察】
・有効性:
・体幹部定位放射線治療(SABR)はオリゴ転移を有する前立腺がん(OMPC)において病勢進行を有意に抑制
・PSMA PETで検出可能な全病変を治療することが重要
・免疫学的意義:
・定位放射線治療(SABR)は全身性免疫を誘導し、抗腫瘍効果の一助となる可能性が示唆
・分子マーカー:
・高リスク遺伝子変異は定位放射線治療(SABR)効果の予測因子になりうる
・アンドロゲン除去療法(ADT)開始のタイミング:
・定位放射線治療(SABR)によりアンドロゲン除去療法(ADT)開始を遅らせる戦略が現実的
・限界:
・小規模試験であり、長期の治療成績の評価は限定的
・クロスオーバーが多く(観察群の83%が後に体幹部定位放射線治療を受けた)、群間比較の解釈に注意が必要
・生物学的相関解析は探索的で、さらなる検証が必要
【結論】
・オリゴ転移を有する前立腺がん患者に対する体幹部定位放射線治療(SABR)は安全に施行可能で、病勢進行抑制と無増悪生存期間の延長に寄与することが示された。
・PSMA-PETによる全病変に対する治療が鍵であり、免疫応答や遺伝子解析を併用した個別化治療の重要性が示唆。
・第III相試験による検証が求められる